地方創生で取組むべき地域観光戦略とは

地方創生で取組むべき地域観光戦略とは
・地域観光をイノベーション
地域の観光が競争力をつけるためには、地域間競争を通じてサービス内容を向上させていく必要がある。競争力のない理由として、旅行のパターンが、団体を主体としたものから個人・家族を主体としたものに変わりつつある一方で、観光地が依然として団体仕様・金銭消費型になっており、個人や家族がゆっくり時間をかけて楽しめるような魅力づくりが不足していることが問題点である。また、旅行者に対しても、地域の受け入れ体制が未整備、効果的なPRが不十分―などの問題点がある。
また訪日外国人が加速度的に増えてきた中で、インバウンドでの競争力のある観光地創造の推進のためには、これらの問題をどのように改善していくべきか、戦略的な議論を踏まえて対応しなければならない。
・時間消費型のコンテンツを
まず、これからの観光は「点から線」「線から面」への広がりが重要である。これは、通過・日帰りから1泊2日、1泊2日から連泊、リピーター化・週末住民化・定住へと滞在が長期化させるための戦略が必要である。
そのために、観光を振興しようとする地域は、従来型観光の主流である名所・旧跡や温泉と言った従来の観光資源を磨くばかりでなく、テーマ旅を求める個人や家族が楽しめるような時間消費型・体験型の観光コンテンツを充実させたり、古い町並みや景観を保存したりする必要がある。地域主導で魅力的な観光コンテンツや食・土産物を開発し、それをブランド化できれば、地域に収益も還元もされる。
旅の、担い手観光関連産業も、泊食(宿泊と食事)分離などを通じて、観光客の行動選択の自由度を高め、サービス内容において革新する必要がある。食事は宿でとらなくてもよい、あるいは、外へ出て食べることも選べるようにすれば、連泊もしやすくなる。地域ぐるみのサービス体制が活発になり、観光客にとっては選択肢が増える一方、競争によってサービスの水準の向上が期待できる。
また、団体旅行の物見遊山的な旅行では、少数の観光拠点のみに訪問が集中してしまうが、現地集合型のプライベートツアーなど自由度の高い旅行が増えれば、これまであまり知られておらず、訪問客数の少なかった観光拠点にも観光客が訪れるようになる。そうなれば、観光を生業としない人々も観光コミュニティービジネスで観光客を誘致できるようになり、観光市場のすそ野も拡大する。
・プロの人材育成が急務
このような魅力的な観光地づくりや観光関連産業の活性化のためには、プロとしてのスキルを持った人材の育成が急務である。観光カリスマ
のように地域において観光への取る組に成功した人々から学んだり、住民参加型のプログラムづくりを行いその経験と知恵を広く活かしていくことが有効である。
観光地づくりを行う上では、地方自治体、観光協会、商工会議所、NPO(非営利組織)など地域の団体が、自分たちの地域魅力は何であるか、それがどのような客層にアピールするかを真剣に考え、意欲を持って取り組む必要がある。旅行会社主導ではなく受け地主導、地域資源の活用など様々なコンセプトが考えられるため、それぞれの地域が独自の工夫が必要である。
産業界も、業種の枠にとらわれずに、農業、漁業、伝統産業、商業・サービス業など六次産業として地域内での幅広い産業間パートナーシップを確立し、観光地づくりに参加する必要がある。多彩な団体個人が集い持続可能な観光地推進コンソーシアムの組織づくりも求められる。
いま、地方創生は観光に頼らないとできないという声も上がっている。現実に地方で成功事例が現出している。行政側も効果的なサポートを行いながら、関係者が一体となって取り組んでいく必要があり、新しい地域観光創造戦略により地方創生に立ち向かうことが期待される。